10《腸捻転ネットの解消》
現在のテレビ朝日(ANB)は、フジと同じ年に開局した時には日本教育テレビ(NET)という教育専門局だった。その後開局した東京12チャンネルも技術教育の専門局だった。この2局が一般総合局になったのが昭和47年だった。これを機に朝日、読売、毎日の各新聞社間の談合が進み、朝・読が持っていたTBSの株は毎日新聞に売却、毎・朝が持っていた日本テレビの株は読売に譲渡が決まった。また、NETの大株主である朝日と12チャンネルの株主である日経新聞の間の話も進み、日経が持っているNETの株を朝日に譲ることも決まった。この結果、TBSと毎日新聞、NTVと読売新聞、NETと朝日新聞、12チャンネルと日経新聞という提携関係ができあがり、日本教育テレビ(NET)は全国朝日放送(ANB)と社名を変更して、朝日新聞系のテレビ局であることを鮮明にした。このことはネットワークの再編につながった。昭和50年3月末をもって大阪の毎日放送がNETとのネットを打ち切ってTBSとネットを組み、反対に大阪の朝日放送はTBSとネットを打ち切ってNETとネットを組むという突然の発表だった。裏面での新聞同士の談合は2年間続いていたが、視聴者には寝耳に水だった。それまで毎日放送が制作放送していた「仮面ライダー」は、東京ではNETの番組表に載っていたので、東京の視聴者はNETの番組だと思っていた。それが4月からTBSの番組表に引っ越す。大阪の視聴者はこれまで視聴率絶好調のTBS番組と朝日放送制作の「必殺シリーズ」を朝日放送で見ていた。だから朝日放送(ABC)の人気も営業成績も抜群だった。それらの好調番組が4月からゴッソリ毎日放送の番組になったわけで、それから長い間朝日放送は苦労することになった。東京の番組表で見るとTBSは「必殺シリーズ」を失って「仮面ライダー」を得た。NETは「仮面ライダー」を失って「必殺シリーズ」を得たことになる。新聞各紙は一斉に「腸捻転ネットの解消」という扱いで済ませたが、視聴者が戸惑ったことは言うまでもない。でも新参の私にとっては、この事件のレポートを担当したため、他系列も含めて、ネットワークの成り立ちや資本関係など、色々勉強させてもらった。