5《NHKと民放のネットワーク》その2
民放の場合は、関東(東京・茨城・千葉・栃木・群馬・神奈川・埼玉)、東海(愛知・岐阜・三重)、関西(大阪・京都・奈良・兵庫・滋賀・和歌山)、北九州(福岡・佐賀)、岡山・高松地区と鳥取・島根地区以外は、基本的に各県別のエリアであり、別資本である。その上、キーもローカルも全部が一度にできたわけではなかった。
ちなみに、最初に開局した日本テレビから6年後のフジテレビ開局までの20社を開局順に並べてみよう。
(1) 日本テレビ(東京)
(2) 東京放送(東京)
(3) 中部日本放送(名古屋)
(4) 大阪放送(大阪)
(5) 北海道放送(札幌)
(6) RKB毎日(福岡)
(7) 山陽放送(岡山)
(8) 西日本放送(高松)
(9) 読売テレビ(大阪)
(10) テレビ西日本(福岡)
(11) 信越放送(長野)
(12) 静岡放送(静岡)
(13) 関西テレビ(大阪)
(14) 北陸放送(金沢)
(15) 南海放送(松山)
(16) 新潟放送(新潟)
(17) 東海テレビ(名古屋)
(18) 長崎放送(長崎)
(19) テレビ朝日(東京)
(20) フジテレビ(東京)
このリストにはさまざまなドラマがある。開局の免許取得をめぐっては、裏面で新聞社間の戦いがあったことは有名である。(4)番目の大阪放送は大阪で第一局(最初の局)であるが、この獲得ではライバルの朝日系と毎日系のラジオ局が争った。郵政省は「チャンネルプランでは大阪は一つなので、双方で一本化するよう」明治、ラジオの朝日放送と新日本放送が合併して作ったテレビ局が大阪放送である。3年後に第二局目の免許を取った新日本放送が出て行き、毎日放送と改名して開局する。毎日が出て行った後の大阪放送は、晴れて朝日放送に社名を改め、ラジオの兼営局で存続した。この朝日放送がトウキョウのテレビ番組を毎日系の東京放送(TBS)からもらっていたから、腸捻転ネットと言われた。ローカルのマーケット規模から見て、(7) 岡山と(8) 高松の開局順が異常に早いのは、開局2年前の郵政大臣、香川出身の平井太郎が「テレビ周波数割当計画」(チャンネルプラン)を修正したためである。常識的には仙台や広島の方が大きいマーケットのはずだったが、役所に智恵者がいたようである。岡山と香川の間には海があるだけで他県のような山岳による電波障害がない。お互いの電波が漏れて、岡山・香川の沿岸部では見えてしまう。どうせ見えるのなら小豆島に相互利用できる中継等を建てて、2県2局の相互乗り入れエリアにしたら、仙台や広島より大きいマーケットになる。そこで岡山の山陽放送はTBSの番組を受け、高松の西日本放送は日本テレビ系になった。この仕切りが今も続いて「岡・高地区」は例外的に2県5局のエリアになっている。これと似たエリアが中国山脈の日本海同士が横長くつながった鳥取・島根地区で、ここは2県合計してもマーケットが小さいという理由で、今でも2県で3波しかない。