7《編成の神様はアパッチの親分》

 部長の椅子を惜しげもなくくれてしまった顔の長い部長こそ、共同通信の第一期生でニッポン放送の編成課長を経てフジの開局を準備し、「編成の神様」と言われた村上七郎さんだった。開局時に「母と子供のフジテレビ」というキャッチフレーズを作り、他局に先駆けてお昼のメロドラマや「テレビ名画座」で主婦層をとらえ、夜の7時台に「少年ジェット」や「少年探偵団」「つんころ大助」「三太物語」と子供向けのヒット番組を編成していた時期である。彼は番組を企画したり、キャッチフレーズ、タイトルなどを考えるブレーン・ストーミングでは、「下克上」を積極的に奨励した。若手のやる気を刺激し、ベテランには緊張感を与えたのである。これは今日までのフジテレビ編成の良きDNAになっている。
 その一方で見事な気配りの人だった。五社さんのときも、私は「いま二人で企画を作っている最中ですが、面白くなりそうなんです。そのときはよろしくお願いします」と報告をしただけだった。数日後、彼は数歳年下で文化放送出身の制作部長のところへ立ち寄り、「ウチの若いのが君んところの五社君と何か企画を立てているらしいが、もし面白そうだったらまず君に相談するから、そのときはよろしく頼む」と根回しをしてくれたことを知ったのは何年も後のことだった。広島と愛媛をつなぐ「しまなみ海道」の島々の勢力を張った海賊・村上水軍嫡流の22代目のご子孫だから、まさにアパッチ族の面倒を見る大親分だったのである。


※村上七郎氏の著書

ロングラン―マスコミ漂流50年の軌跡

ロングラン―マスコミ漂流50年の軌跡