10《産婆はつらいよ》

 シリーズが終わってしばらくして、松竹から映画化の話が来た。まだ映画会社の方がテレビ局より偉かった時代、テレビ番組が映画になるのはフジの宣伝になると思い、「どうぞ、どうぞ」と無条件でOKしたのが私の大失敗だった。「企画フジテレビ」をタイトルに出すことを条件にすればよかったのである。そうすれば昨今自分が作ったかのように大宣伝したNHKも困ったろうに。
 この傑作シリーズはもちろん山田さんの力であり、渥美さんの力であり、それ以外の何物でもないのだが、最初の出会いのとき、初日でもし諦めていたらどうなっていただろうかと、ふと思うことがある。編成部の企画マンは、ときに番組の生みの親になることもあるが、通常は産婆役である。産婆がいなくても子供が生まれることはよくあるが、いなければ生まれなかったかも知れないと思って、密かに満足するのが企画マンなのである。